殺し屋のパラドックス/ただのみきや
 
職業は会社員
仕事は数字を殺すこと
会社に入るまで知らなかった
仕事は数字を作ることだと思っていた
ところがそれは間違いで
一年の始まりにはすでに数字が
月の始まりにもやっぱり数字が
山と積まれて待ち受けている
その数字をひとつひとつ殺して
消して行くのが仕事なのだ


あらゆる営業活動
にこやかな顔での応対やサービス
遅くまでの残業も
数字を殺すための手段にすぎない
会社は努力に報いてはくれない
会社は数字に報いてくれるのだ
小さな日々の殺戮の積み重ねにより
月ごとの数字軍を葬り去る
きっちり殺せば良し だが
殺し切れなかった数字は集まり勢力を増し

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