ナボコフ『青白い炎』第一篇・試訳/春日線香
 
とともに画家であり
グロテスクな成長と滅びのイメージが絡み合った
写実的な事物を好んでいた。
隣室の赤子の泣き声を聞きながら彼女が暮らした部屋は
そのまま手を加えずにおかれた。
そこに残るちょっとしたものが持ち主の人となりを表している。
珊瑚を含んだ凸レンズ製のペーパーウェイト
索引を開いたままの詩集(ムーン、ムーンライズ、ムーア人、モラル)
哀愁漂うギター、人の頭蓋骨
そして地方紙『スター』からの珍しい切り抜き
「レッドソックス、チャップマンのホームランによって
 ヤンキースを5対4で破る」がドアに画鋲で留めてある。
 
わたしの神々は若くして死んだ。神を崇めることなど
[次のページ]
戻る   Point(2)