ナボコフ『青白い炎』第一篇・試訳/春日線香
 
わたしは影だった、窓ガラスに映じた偽の青空に
殺された連雀の影だった。
わたしは灰色の羽毛の染みだった――しかもわたしは
反射した空を、生きて飛びつづけた。
また部屋の中からも、二重に映して見たものだ
わたし自身を、ランプを、皿に盛った林檎を。
夜の帳を取り払い、暗いガラスに
家具がみな草上にあるように飾ろう
ああ、なんと喜ばしいことだろう
降り積もった雪が芝生を覆い、そしてその上に
椅子とベッドがすっくと立つのは
出て行こう、あの水晶の国へ!
 
降る雪をふたたび拾い上げよ。
ゆっくりとぶざまに舞い落ちる、不揃いでくすんだ雪のひとひらを
日の青白さ、あやふやな光につ
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