ロクデナシ/為平 澪
ったっけ?南」
「あのね・・・。」
南というのは、幼なじみで今は僕の彼女だった。陽気で優しくて穏やかでかわいい。
僕が心を許せる唯一の女。ずっと一緒だった分、何でも話せた。だから僕は南の言葉なら信じられる。ところが、僕は次の瞬間、意外な言葉を聞く。
「あのね・・・。鶴町くんっていい人ね。」
僕はその時、きっと怖い顔をしていたと思う。
いつも楽しそうで劣等感なんて全ったくない鶴町を、そして何よりも、自分が一番尊敬できるのは両親だと笑って答えた鶴町を、南は、僕の目の前で誉めた。僕に何が足りない。
完璧になろうとしている努力をすればするほど、僕は鶴町に全てを奪わ
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