ロクデナシ/為平 澪
 
雲がゆっくりと通りすぎ、新しい雲を呼ぶ。その雲の輪郭を夕日が映し出した。僕達は同じモノを見ていた。

 鶴町にはかなわない。これじゃあ南も好きになるわけだ。そう思って
「なぁ、鶴町、南を大切にしてやれよ・・・。」
と言うと、鶴町はキョトンとした顔をした。
「何言ってんの?お前、南はお前にゾッコンだぜ。何を勘違いしているのかは知らないが、お前が元気がないって、ずっと悩んでいたぜ。全くそう言うことは本人に話せっつうの!相談される身にもなってみろよ・・・。アレ・・・?もしかしてお前、妬いてたのか?」
 鶴町は意地悪そうにニヤニヤ笑った。僕は恥ずかしくなってうつむいて、黙ってしまった。


                                  完

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