ロクデナシ/為平 澪
奪われてゆくような気がしていた。
その日を境に僕は、精神安定剤を常用するようになった。一時的な心の平安の中でも、鶴町の存在は僕を恐怖させた。
――この薬を飲めば、鶴町のようになれる・・・そんなおかしな妄想まで抱くようになっていた。誰も信じられなかった。もちろん自分すら。
いつのまにか僕は、自分に足りないものを補うかのように薬を服用していった。
学校へ行けなくなったのは、薬を服用してからそう長くはなかった。行きたくても行けないのだ。鶴町の横で南が笑っているようで恐かったのだ。そしてしの笑みが、学校へ行けない僕への嘲笑であるかのような気さえしてくる。いや、南だけではな
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