藤と桜/ただのみきや
藤は支えが欲しかった
己が生きて行くための
桜は藤を必要としなかった
だが支える力は持っていた
今では一本の木のように
鬱蒼と密にからみ合うが
異なる性を持つもの同士
時を違えて咲き また散る
桜は艶やかに散り際もまた
はなびらは赤子の肌のよう
だが藤は乾いた涙のよう
いのち抜けたはなびらの蒼さ哀しく
共に生きるというには
あまりに偏った関係だった
厄介者に取り憑かれた
不幸な桜の木
取り憑かなければ生きられない
悲しい藤の木
もう分かたれることもなく
倒れる時も一緒だろう
それが幸せか不幸せか
本当は誰が知りえよう
生い茂った桜の葉に抱かれ
きょう藤の花が泣いていた
《藤と桜:2015年6月2日》
戻る 編 削 Point(17)