きみがいた、きみといた。/あ。
 
ひらを差し出してきた
きゅっと握れば暖かな湿り気が私の皮膚に伝わり
そのかわいらしい指の形に
まるで花のようだと一瞬思ったのだけど
違って、
花を咲かせる土であり光であり栄養なのではないかと
そんな風に思い直して、
きみは私の大層な思考には気付かず
もう片方の手で器用にねこじゃらしを抜いて
ゆうらゆらともてあそびながら
歩いてた、夕焼けしあわせに


玄関先で脱ぎ散らかしたままの靴下には
名前も知らない夏草が
こっそり私を覗いてた、まるできみだった

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