へびか靴紐/そらの珊瑚
小さなへびかと思ったら
いつかちぎれた
しましま模様の靴紐だった
だとしてももう
それをくぐらせるズックの穴がない
わたしにはもはや必要ないものだったので
さよならを言って
立ち去るくらいしか
選択肢はない
梅雨の前の草むらは
ほどよく乾いて
青々としているから
うっかり時空が入り混じることもあるし
こんなふうにして
失くしものが偶然見つかることもある
それが誰のものであるかなんて
実はたいした問題ではなかったし
娘は実によくいろんなものを拾ったものだった
それに名前を書いたにせよ
いずれ月日の魔法で溶けてしまう
小石にしたってそう
楕円の形の花崗岩を
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