雨間/春日線香
 
ランの前を通る
「心を込めて準備中」
深夜は営業していないので
通りに面した大窓から
店内が見渡せる
がらんとした店内が
向かいの自動販売機の明かりで
どこまでも見渡せるが

座席にぎっしりの人影が
不審そうにこちらを振り向く

などということを考えつつ
都合のいい幻は見えてこない
見えないが
彼らのほうはこちらをじっと見ている
のかもしれず
水滴はゆるやかにガラスを伝って

かすかに小雨が降る中
丑三つ時まで客足の絶えない
ラーメン屋に入ろうとして
やめて
コンビニでコーヒーを買おうとして
それもやめて

朝方にはまた本降りになる
窓がさっと開き
腕がシャツをつかんで
窓を閉める
じっと見ている
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