ばらのこと2/はるな
 

咲き誇るということばにふさわしく、早すぎる夏日を仰いで薔薇が咲いている。
あちらにもこちらにもまっ赤だとかまっ白の花びらをひらいて、でもわたしの好きなのは白から甘いオレンジ色へ溶けていくような色の薔薇。影は濃く、そのぶん木漏れ日は光る水滴のようにつるつるはじけとんで、歩きはじめた娘の体じゅうに注いでいる。
五月はいつも、美しい季節だと思うが、昨年からこれまでにかけてはとりわけ美しい一年を過ごした。おそらくもう感じることの難しいような美しさだ。少女のころのもどかしさを思いだすことが難しいように。

かつて多くのことが許せなくて、許したいと思っていた。許すことは愛することに似ていて、愛する
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