みずにゆらぐ/ただのみきや
 
揺るがないものが揺らぐ
仕方のないこと
ありのままを見ているつもりで
水鏡に映った姿を見ているから
冷やかな風にさざなみ
優しい陽射しに微笑み
自らの夢を重ね映して

時を凍らせた写真
岩に刻んだ文字も
揺れる のは
    ひとの心

どしゃぶりの雨と抱き合って
目を閉じ シャッターを切る
画像でも動画でもない
ひとつの場所で
ひとつの石だった
体温を分かち合い
互いの感触を確かめても 尚
決して混じりあうことのないもの

わたしたちはそれぞれ
遠く離れた沼の主だった
生まれつき目を持たない魚
全身の皮膚を裏返したように
世界と苦痛で触れ合うし
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