倫理/葉leaf
意志が私を地衣類から樹木へと転化させた。一杯のコーヒーは一つの倫理だった。一杯のコーヒーは私を根底から支える基本原理に等しく、思えば私の人生の要所要所を流れていたのは生きるための血液ではなく、生きる原理を示すこの黒い飲み物だったのかもしれない。
コーヒーの滑らかな苦さは人生を一人で生き抜くための苦しみであり、コーヒーの中毒的な魅力は困難を切り開く意志に酔う快楽であり、コーヒーの美しい黒さは衝動や焦燥の暴力性であり、コーヒーのもたらす高揚感は人生の苦楽すべてを喜びとして創造する力である。これらは全て、私がかつて傷だらけの絶望から生きる意志の方角へと立ち直った際に獲得した基本原理であり、コーヒーはつまり私の根底的な倫理を現すものに他ならない。私は今日もコーヒーを飲む。私を支える根本倫理を喉に流し込むのだ。
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