倫理/葉leaf
 



連日深夜まで残業して、さらには上司からの叱責などのストレスにさらされて、私は発すべき声も思考すべき言葉も抜き取られてしまった。朝目覚めて外が明るくなっても、いつの間にか孕んでしまった暗黒に吸収されて、私には幾分も光が届かなかった。私は重力に屈しきれず、地衣類のように朝の底を這いながら、自分の身体の至る所に重く沈殿した社会というもの、責任というもの、労働というものの元素が代謝を狂わせるのに任せていた。

そんな朝に一杯のコーヒーを飲んだ。安物のインスタントコーヒーで、ブラック。すると、もはや出社できないのではないかという限界を示す壁が自壊し、どこまでも独りで生き抜いてやる、という意志
[次のページ]
戻る   Point(1)