ノート(鏡夜)/木立 悟
 



木々のはざまの灯をくぐり
遠い雨の声は届いて
うねりは低く道にほどけて
夜から夜へと紋をひろげる



冷たい翠が空につらなり
生きものはいないと告げている
灰のなかの白たちを
にじむように抱き寄せている



耳に触れる色があり
足の指までしたたり落ちる
とまどいと赦しは螺旋の外から
光と雪の心を見つめる



苦しさは胸に迷う音
苦しさは骨に積もる音
見知らぬ空のつらなりから来て
命を知らずに眠る音



はざまを塗ってはすぎてゆく
こぼれたものから去ってゆく
独りの声のいろどりに
鏡のなかの夜はつづく









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