午後へ 午後へ/木立 悟
泡が回る
影が回る
呑まれる前の
小さな色
春の内の冬
木の家を巡る
瞳のにおい
泪のにおい
音に音を差し出せば
せわしなく手をひたす色
みどり みどり
毒と知りながら滾る色
鉱を囲む花に雨が降る
野の裾が霧に引かれ
またひとつ
時と地の嘘が露わになる
水が水に洗われ
胸を流れる
ゆうるりと分かれ
渦の光に残りつづける
応えは眩み 応えは軋み
空に沈む手のなかで
花は葉に 葉は花に
まばたきに震え ゆらめく曇が
ひとつの笑みに拓かれてゆく
戻る 編 削 Point(5)