雪の日/opus
やしていた
見慣れた街は
僕の知っている街ではなかった
全ての響きが
全ての囁きが
全ての瞬きが
何もかもが違ってみえた
吐く息さえも白く、
まるで命が零れでているかのようだった
お母さん、早く来ないかな
「お待たせ。」
そう声が聞こえて
前を見ると車が見えない
ザクザクザク
足踏む音が聞こえて
そちらを見ると
長靴を履いた母親が
ゆっくり、大股で
こちらに向かって歩いて来た
「寒かったでしょう?」
そう言って
ニット帽と
手袋を付けさせた
「こんなに積もってびっくりしたねぇ。
寒かったねぇ。
お腹減ってない?」
帰り道の途中で僕らは
ケンタッキーに寄り
クリスピーを買った
左手で母と手を繋ぎ
右手でクリスピーを食べながら
家路についた
そのクリスピーは本当に
本当に美味しかったんだ
その事は
今でも覚えているし、
多分、
二度と忘れることはないと思う
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