藤のからまる森で/石瀬琳々
 
昼下がりの
うすむらさきに藤がひかる
森で
少女は見知らぬ少女と出会った


目を閉じて 見知らぬひとと
わたしの森を過ぎてゆく
風、


心臓の音だけが聞こえるでしょう
唇と唇が触れ合い
少女の長い髪が痛くって ね、

 
 アナタハ一体誰デスカ
 アナタガ何者カナンテドウデモイイヨウニ


やがて黄昏が
うすむらさきになって
わたしたちの慕情をかくした


見知らぬひとと 指をからめて
わたしの森をさまよう
夜、


何も知らなくてもいいのです
星はお互いの胸にひかって
どこかせつなくって ね、


藤がゆれる うつくしくあるためだけに
少女たちはもうどこへも行けない
森で
明日もその次の日も




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