雲を記憶する男/GGP
 
晴れた日は全ての者へ祝福を送る。

*

雲を記憶する男がいた。
男は、雲を見て、そのカタチ、色、透明度、水分量を判断し、
記憶するという、極めて異様な能力を持っていた。
そして、日々の雲を記憶し、スケッチし、文章に綴り、
丁寧にスクラップブックに記録していた。

ホラ、ご覧。今日はとてもいい雲だよ。

少女は、男を見上げ、また雲の話なのね。と思った。
しかし悪い気分ではない。今日はとても晴れていて、
柔らかく、キリリとした日差しが気持ちよかったからだ。

冬のよく晴れた日は、全てを祝福する。

嘘をつく者、盗みをはたらく者、
人を襲う獣、善良な者、伝道師・・・と、
職業、業を問わず祝福される日だ。


雲は様々なカタチへ状態を変化させ、
舞台の端から、端までを流れていく。

*

男と少女は、そんな雲を、しばらく眺めていた。
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