ゴッド・ハンド/為平 澪
手袋をした手が 器から
大量の人を掬い上げていた
その指の狭間から 夥しい人が
こぼれて落ちていった
器の底から
呻き声や悲鳴や嗚咽が聞こえても
泡がはじけるように消されていく
手は器の底から常に差し伸べられていたが
手袋をした手は そっと
器の上をラップして密封した
手袋の上に残った人の頬は赤らみはじめ
ゆっくり起き上がると
笑い合い抱き合い、お礼をいって出ていった
指は 手袋の指は
掬い上げた人数だけを毎日数え
白い紙の上に
出ていく人と泡になった関係者の捺印を
又、数えた
印、になった人たちは 紙切れ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(13)