戦慄/イナエ
た
そのうち戻ってくるだろうと
ひとり 弁当を取り出した
女の子達がどやどや入ってきた
ガヤガヤと話しながら弁当を広げた
男の子は誰も戻ってこなかった
仕方なく教室の片隅で弁当を広げた
一人の少女がヤカンを持って
湯飲みにお茶を注いで廻っていた
片隅にひとりで居るぼくのところに来た
ぼくは弁当箱の蓋を差し出した
そこへお茶を入れるのがぼくらの習わしだった
すると少女は 湯飲みないの と聞いた
意外に思って 口ごもるぼくをよそに
少女は大声で他の子に聞いた
「誰か余分な湯飲み持っていない?」
その瞬間だった
ぼくの中を不思議な戦慄が走り抜けたのは
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