ひとつ 露光/木立 悟
音に当たり
目が痛む
何も見ない
器の心
火傷
夜の雨を着る
灯りのはざま
見えない橋
切れぬ鋏が切る静けさがあり
水たまりを避け曲がる色
星は無く どこまでも無く
文明の地層を隠しつづける
暗くわずかな虹
満ちてはあふれ
遠去かる音
見えない橋を照らすいかずち
暮れの白が
白のままでいる
夜は増しても
低くわだかまる
光の点の
群れのひとつに指を焼かれる
こだまのような水たまりの径
曲がりながら下りてゆく径
白く燃えるかたつむり
夜の葉から地へこぼれる光
踵を上げ 空をめくり
滴を還す
白は白に降り 足跡はつづき
動くものたちを消してゆく
器の底に触れる手のひら
濡れた心を抄い取る
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