模倣死/じぇいぞろ
 
一生空を失ったという
君の悲しみを理解できず、
徘徊する君を追いかけた。

セキュリティのないビルを探し、
鉄柵の縁をゆらゆらと歩く。
ナイロンのミュールに反射する
オレンジ色の月。

階下の部屋の開け放った窓から、
群れからはぐれた孤独な鯨の声にも似た
死んだサックス奏者の
ブラックミュージック。

ボクたちの考えた無邪気な
ライ麦畑の模倣。
ボクが彼女をこちら側へ引っ張り
抱き抱える。

黄色い月がミュールに反射する夜に。
睡眠薬をODした君が
ふらふらと鉄柵を歩く。
錆びたボルトが外れて、
引っ張った手が滑った。

あああああ
落下した君は動かなかった。
模倣とリアルの境界の向こうへ。



戻る   Point(1)