麦藁帽子。/
梓ゆい
雨を全身に浴びて
空へと伸びてゆく。
夜にはこの雨も上がり
水たまりや朝露の中に
父は姿を現すのだろう。
家々の草木や花
慎ましい営みの中
懸命に生きようとする妻と娘たちを見守りながら。
埋まったままの球根
青葉が揺れるしだれ桜
去年収穫したひまわりの種
今年もまた
庭一面にビビットカラーのパズルを描き出す。
麦藁帽子をかぶり
額の汗をぬぐいながら草取りをする父の姿を
追い続けて。
戻る
編
削
Point
(6)