麦藁帽子。/梓ゆい
 
雨を全身に浴びて
空へと伸びてゆく。

夜にはこの雨も上がり
水たまりや朝露の中に
父は姿を現すのだろう。

家々の草木や花
慎ましい営みの中
懸命に生きようとする妻と娘たちを見守りながら。

埋まったままの球根
青葉が揺れるしだれ桜
去年収穫したひまわりの種

今年もまた
庭一面にビビットカラーのパズルを描き出す。

麦藁帽子をかぶり
額の汗をぬぐいながら草取りをする父の姿を
追い続けて。

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