麦藁帽子。/梓ゆい
父の眼鏡が光を取り込んで
天井に反射をした淡い粒子が
「帰ってきたよ。」と呼びかける初夏の午前中。
庭では母と娘が
来たるべき新盆に備え
草取りをしている。
うっすらと積もる雪の中
父が遠くへと逝ったあの日から早数ヶ月。
軒先では猫たちが遊びまわり
父の好きだった花達が少しずつ開き始め
近くにいるであろう家の主(あるじ)に敬意を向けて
競い合いながら花びらを差し出す。
父の姿は見えなくとも
時折吹く涼しい風が
「お疲れ様。」と母と娘の汗をぬぐう。
(午後からは、雨が降った。)
少しは休みなさい。と気遣うかの様に。
花達は
葉と茎に降り注ぐ雨を
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