失われた声/藤竹
 

ふと思い出した
小学1年生のときに亡くなったおじいちゃんを

まだ自転車に乗れなかったぼくは
おじいちゃんのこぐ自転車の後ろに
いつも乗せてもらっていた

目的地もなく
ただゆっくりゆっくり
田んぼだらけのあの道を
背中に引っ付いて
ゆらゆらしながら乗っていた

おじいちゃんが振り返って何かを言う
でも声は全く聞こえない
口は動いているのに
聞こえない




僕の中のおじいちゃんは声を失った
僕はもうおじいちゃんと話すことはできない
おじいちゃんの声が聞きたい
話しかけて欲しい
そう願っても届かない
僕は、ぼくの幼さを怨む

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