Amefuri/Debby
 
長い休暇から
雨降りが逃げ出した
もうずっと帰ってこない
雨降りの日

彼女は滞りなく職務をこなした。書類は1ミリのずれもなく積み上げられ、文字たちはとても居心地良さそうに見えた。雨が降る日だった。彼女の職場、彼女のデスクから見える窓。壊れた雨どいがぶらさがったそこをを、誰も眺めない。

長い休暇には猫のことを考えた
猫を飼うことを考えた
そして彼女は結論づけた
私は猫を飼いたいのではない
猫を飼うことを考えたいのだと

彼女の打つ印影は実に美しかった。そこにあるためにそこにある、といった同語反復的な趣がそこにはあった。彼女は雨が降る日が好きだった。今日は雨が降る日でお仕
[次のページ]
戻る   Point(4)