Creep/jin
 
作業のようだ

「何してるの、ほら早くここから出てって」リリアは僕の身体を玄関の方へ向ける
「え、出るの?」
「苦しんでいる人がいるわ。あなたが変わらなければならないの。うまくいかなくてもいいじゃない」
「変わるっていっても、おれはおれだよ」
「違うの。元々あなたは、わたしの部屋にいるウジ虫なのよ。逃がしてあげるわ」

リリアに背中を押されるままに、僕は玄関に向かっていった
何も準備できていないが、赤い布きれだけを握りしめていた
靴を履いていると、リリアが後ろから手を伸ばし、マンションのドアを開けた
「ねえ、パイナップルはもう沢山よ」
振り返ると、部屋の中にも錆びた缶の中にも、リリアの姿はなかった。
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