黒犬/opus
 
こにあの女がいた
仄かに光るその姿は一瞬犬をたじろがせた
彼女から受ける印象はこれまでの全てと全く違ったものだった

「何だあれは?」

次の瞬間に思ったのは
「喰おう」
それのみで
駆け出し、
追いつこうとしたその時、
女は木の影に入り、
そのまま消えた

その後、
女は毎夜現れ、
追いかけては、
木の影へと消えた
その姿を追い求め
辿り着いたのが
その家だった
昨晩、女が木板のドアを開け
家に入るのを見定めたのだ

犬は夜を待つことにした
夜、女が出て来た瞬間に
女を喰らうことを決めた
涎が垂れた
涎と共に
寂しさが込み上げた


[次のページ]
戻る   Point(1)