愚愛の詩/ただのみきや
 

ただ以前よりもそう心がけ
あとは 祈るだけ
そうして三年が過ぎた


今日わたしたちは向かい合い
言葉少なげに互いを受け入れている
かつてのお前がそうだったように
おまえが話す言葉をわたしは半分くらいしか理解できない
それでもわたしたちは食事をし
時々笑うのだ
わたしはおまえを愛している
おまえもまたわたしを愛しているのだろう
ごくあたりまえの十代の若者が
ごく自然に親に持つ複雑で単純な感情をカードのように伏せて
ポーカーフェイスに成りきれないまま
そしておまえの
森の動物のようにしなやかな身体と
わたしよりはるかに柔軟な知性の成長を
目の当たりにしながら 胸の中
橙と青の絵具が少しだけ滲んだようなこの感慨を
わたしもまた伏せたままにしておこう
あまり深くない話題で笑い合える今日を
神に感謝しながら
勝敗のないトランプゲームが
いつまでも続くことを願って




               《愚愛の詩:2015年5月5日》








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