愚愛の詩/ただのみきや
発する柔らかな音のかたちが
まだ定まらないころ
神経衰弱でトランプを捲るように
何度も見て触れて味わって
モノとなまえが一致して行く
意味を纏うのはまだ先のこと
ちいさな器は無限に広く深く
おまえは乳だけで生きてはいなかった
確かにわたしたちの間には
透明な血が通っていた
おまえの周りにある全てが
父であり母であり教師でもあり
同時に奪うものであり呪うものであり
傷を負わせるものだったから
いつも全神経を巡らせて
悪い可能性を見つけ出す
わたしは父親でありながら母猫だった
過敏に反応して
この世界を相続させようとしながらも
一切から隔離するように
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