翼ある憂鬱/
塔野夏子
翼ある憂鬱が
私を浮揚させている
薄明でも薄暮でもあるような
ブルウグレイの空間に
静けさの遠くに
ほの白く小さく浮かぶのは
船の帆のようでもあり
君の面差しのようでもある
いずれにせよ
その遠さが
いまは奇妙に心地よい
私は小さく歌う
この憂鬱が途絶えぬように
この遠さがそこなわれぬように
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