翼ある憂鬱/塔野夏子
 
翼ある憂鬱が
私を浮揚させている
薄明でも薄暮でもあるような
ブルウグレイの空間に

静けさの遠くに
ほの白く小さく浮かぶのは
船の帆のようでもあり
君の面差しのようでもある

いずれにせよ
その遠さが
いまは奇妙に心地よい

私は小さく歌う
この憂鬱が途絶えぬように
この遠さがそこなわれぬように




戻る   Point(3)