オーティスをシンパシーで笑い飛ばしながら、それでも。/ホロウ・シカエルボク
いな声で囀りながら教会の屋根へと飛んでいく、パンの配達をしてるトラックの荷台から一本くすねて袖に隠し、朝日が見える港で食い尽くした、なんの味もしなかったけれど、生きることを知っていたからそれで構わなかった、先週崩した体調はまだ万全ではなかったが、歩けるのなら軽い眩暈なんて問題にするべきじゃなかった、出す当てのないラブレターを懐に隠しているみたいに歩いた、港から街へと降りてくる通り、まだシャッターの上がる気配のない繁華街、海からやってくる空気が幻想的なスモークを作って…気の早い酒屋でウィスキーの小さなボトルを買い、ときどき舐めながら…アルコールに駆逐された天使たちがご褒美を惜しげもなく晒しながら歩道で眠り込んでいる、そのうちの何人かの口元は汚れている、欲望はきっとそんな風に寒い朝に亡きものになっていく、海の向こうの太陽にようやく色がつき始めて、そうするとようやくどぶ鼠よりは少しマシな―そう――
すべが、あるんじゃないか、って……。
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