冬に見る夢/岡部淳太郎
ここから先は人でないと渡れない
その橋を歩く
時は待っていて
ずっとおまえのために待っていて
待ちくたびれてさっさと行ってしまった
置き土産に
こんなに寒い冬を残して
ここから先の霜で舗装された道
その上を進む
おまえの思いの
季節を経た後でのくるい
雲の上に飛ばした電波
かぼそい思いは
どこにも当たらず
どこにも届かずに
静かに消えていった
ただ獣のようなものが一瞬
視界の端をよぎっただけだった
ここから先は人でなしは通れない
その森をぬける
すべてを黙って送り出してしまった
そんなおまえを責める冬の圧力
おまえの人生は夢ではない
だからこそせめて眠れ
そして目醒めた時
窓の外は
雪!
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