clear/opus
空が澄み渡っている
田園の上を海猫が行く
水に反射する陽射しの破片
風のそよぎ
紫色の旗が棚引いている
少年が根元の竿を掴んで運ぶ
「重いでしょう?」
「平気さ」
旗には
“我々は無敵だ”
山の中
木々を分け入って
開かれたその地で
4、5人の青年が
煙草をふかす
「まだか?」
「まだだ」
真っ直ぐに伸びる鉄道
広がる蒼さ
響く鳴き声
明光するシグナル
響くサイレン
紫色の血
収縮する瞳孔
総毛立つ皮膚
鳴り響く鼓動
綺麗に刈られた後頭部を
大きな掌で撫でられる
「じゃあな」
そのまま男たちは
闇に消えていく
少年は駆け出す
靴が脱げ、転ぶ
裸足のまま駆け出す
小石で足が切れる
血の名残が道に残る
少年は走る
右足を上げ、
左足を上げ、
腕を振り、
風を切り、
飛び上がり、
その先の田んぼの中へ
大の字にダイブした
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