すいっち/そらの珊瑚
 
一瞬で
りんごもにんじんも正論も砕かれ攪拌されてどろどろのジュースになるみたいな
彼女だけの鋭いミキサーのすいっちは日常のいたるところで押されるのだった

あるいは一瞬で
女子なのにおおかみおとこに変身するみたいな
凶暴なすいっちも月夜の晩であろうとなかろうと押されるのだった

そのたびに母は彼女のまずい液体を飲んだり飲まなかったり
こっそり犬に与えたり
おおかみと対等にやり合っても
勝ち負けのないケンカはやはり飲み込めないものだった

わたしの中から産まれたのに彼女の身のうちに宿るものの理解不能なすいっち

わたしはそんなすいっちなど持っていたことなどないと思ってい
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