始発電車/葉leaf
まだ生まれる前の事物は死んでいるので、建物も電柱も物質としての密度の循環を停止している。爽やかで清々しい死臭だが、場合によっては砂のにおいや雨のにおいと間違えられるかもしれない。今まさにすべてが生まれようとしていて、死臭が一気に高まる。
風景の足し算、引き算、かけ算、割り算によってその日の予算は計上される。始発電車はその日の最初の電車として、風景だけでなくその背後にある機構全てを計算する。一日の風景とその背後の予算を組み立て、後続する電車はその予算内で風景を支出していく。風景は足されて遠景となり、引かれて空間となり、かけられて彫刻となり、割られて残骸となり、出来上がった予算は凝縮した一本の針となる。
戻る 編 削 Point(2)