サーカス小屋/為平 澪
 
なければ 空中ブランコはできますまい
足がなければ玉乗りが、口がなければナイフも飲めず
目がなければ火の輪潜りは 虎にだけ

サーカス小屋は店仕舞い
やがてあわれな子供たち テレビで放映されました
それでも子供たちは 大威張り
惨めな姿を晒しては それが誇りだ、勲章と、
愛のカタチに 胸を張る

それを見ていた観客が
両手をたたいて指を指し 声をあげて笑い出す
一番悔しかったのは団長で 一番悲しかったのは
サーカス小屋に行かせた両親

(あれが娘の夢に見ていた「詩人」なのか、
(私たちはただ、自分の食べたお茶碗を、自分の手で洗える、それだけで、、、。
(あの子を見世物にしたて上げたのは、私たちだったのか、、、。
涙ながらにだるまになった 娘の姿に手を合わす

サーカス小屋が見世物小屋になったことなど
勿論知らない子供たち
今日も満足そうに 笑ってる
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