春に吹く風/吉岡ペペロ
風で鳥になっていた。
京香の両手首をつかんで、ぼくがうしろから広げていた。
強い風がしばらく続くと、京香はあたまを前へ前へと落としていった。
そのたびにぼくは手首を強くにぎりしめ、腰を落として踏ん張るのだった。
5月の優しい明るい緑が遠くの山から近くの雑草まであふれていた。
この大きな川の遊歩道で鳥をして遊んでいるのはぼくたちだけだった。
そこに強い風が断続的だけれど長い時間吹くのを発見したのだった。
京香はなんでひとの妻なんだろう。
大人は春に傷つくのだ。
夏や秋に傷つくのはまだ若い証拠だ。
さっき弁護士から運転中かかってきた電話がぼく
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