からす/島中 充
人は
どのように生きてきたかを子孫に知らせたいのだ
知らせなければならないのだ
どのようにして人間は生きてきたかを
私はきのう見た夢の事を思い出していた
海岸に乾物のように干からびた死体
それはおれの弟だと父は言った
蠅の黒くたかった死体 孤島で戦死した弟だと言った
流木を集め 浜辺で火葬にしよう
湿った流木は小さくしか燃えなかった ちょろちょろと燃えて
腹から
太腿から
眼球から
出てくるわ
出てくるわ
うじむし
そして父は指さしながら 口を開いた
そのうじむしを食え
そのように人間は生きてきたと
海のかなたから
密林の奥から
色々な鳥が集まって来た
死体の周りに這い出してきたうじむしを 夢中でついばんだ
うじむしをついばんでいる
私はカラスになっていた
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