町/アンテ
旅人を襲おうとはしなかった
旅人が手を伸ばして
尻尾のように見える部分に触れると
それは突然崩れて
家や町だったものが
原形もわからない状態で散らばった
旅人は長い時間をかけて
廃墟のなかからかけらを拾い集めて
ひとつひとつ
荷物のポケットにしまった
住民は恐る恐る近づいて
害がないことを確かめると
旅人を口々に罵って
町から追い出した
旅人は一本道をとぼとぼと歩いて
町から遠ざかり
埃っぽい風にまぎれて
やがて姿が見えなくなった
人々は瓦礫を取り囲んで
片付けをはじめるわけでもなく
今後のことを話し合うわけでもなく
旅人を呪ったり
自分の不幸を比べあったりしていたが
日が暮れると
一人 また一人と散っていった
そして不安そうに
それぞれの夜を迎えた
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