速度のある風景/葉leaf
 
もわかりません
全ては国道を高速で走る自動車の車窓の風景のようです
優しさには味があったはずなのに味が分かりませんでした
苦しさには暗示があったはずなのに何を示唆していたのか理解できませんでした
会議は開かれ式典は執り行われ契約は取り交わされ
何の間違いもなく結果が次々と出されていきましたが
何の間違いもないことがそもそも間違いである気がするのです
僕は自動車の運転を短いスパンで詰め込み
再び出張のため国道を高速で飛ばします
ですがそもそも自動車なんかいらなかったし整った国道も要らなかった
結果なんて出す必要もなかったし
ただひたすら自分の内側が熟していくのを何年も待てばよかった
人間は時間の泳ぎ方を新しく開発して
それを社会と呼び始めましたが
そもそも時間は無理やり泳ぎ切るものでなく
その上にゆっくり浮かぶもの
僕は国道を高速で走り風景を殺戮しながら
再び時間という液体を少しずつ手で掬っては味わって飲むことを考えています
時間という液体が喉を下っていく感触を想像してはゆっくりと眠りに就きます

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