海をわたる「残光2015」/アラガイs
 

聞き捨てた
島へ渡る船なんて知らないから
僕らは港を探しに歩いていたんだ
見たこともない白い浜辺
ただひたすら国道のガードレールに沿いながら下る
海は眩しくてずっと近かったから
額から噴き出る汗を必死に拭っては船着き場を探した
会話が弾み県境の駅近くまでやって来たとき
二人はやっとあきらめて引き返したんだ
それから君やきみの仲間のことも忘れ
汗が海水着を濡らすことも忘れた
まばゆいばかりの陽射しが全身を照りつけていた
はじめからフェリー乗り場なんてなかった
それを後になって気づいても
僕らは目的を失っては歩き出す
ひかりを遮る分岐点とも知らずに
ただ眼を眩ませていたかった
あれは夏の終わり
沖ノ柱島は近くて遠い
暑い一日を置き去ったまま
しばらくして港に桟橋が作られて
すれ違うように車が走り過ぎた道
思い出せば錆びついた記憶の汗を辿るだけ
いまでは眩しくない太陽が
消えた街の片隅に霞む 。








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