背中に羽が生えた朝/猫の耳
 
て、私飛べるのかな。
ビックリなんかしてなかった。
いつか、こんな時が来るんじゃないかと、心のどこかで思っていた。期待していた。少しも嫌じゃなかった。嬉しかった。

カーテンを開き、窓を開け、朝日を浴び、思い切り息を吸い込み、羽を動かしてみる。
パサパサ…パサパサパサ。ほら、もう少しで。

サーッと風に巻き込まれるように、身体が持ち上がり、風に乗り、風を切り、私は飛んでいた。飛べた。
青空に向かい、ふわっと羽を広げ、旋回し、スーッと太陽に向かい、そのまま街を越え、山を越え、海へ、海へと。

何だか涙が出てきた。どうしてだか涙が溢れてくる。
嫌だった何もかもが消えてなくなってく。
嫌な人、嫌な言葉、嫌な事、嫌な物、みんな下に広がる海原に捨ててしまえ。

私は空を飛んでいる。
白い羽を広げて、ただ空を飛んでいる。

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