木刀/島中 充
 
粗大ごみ置き場に 無造作にブリキのバケツにすてられ
つったっている木刀
それは僕たちである

僕は木刀をひきぬき
大声を出して空を切り おもいきり振り回した
それを見て子供たちが笑っている
僕たちは棒を振り回して生きただろうか
棒で犬をなぐっただろうか
殴られたのは僕たちではなかったか

革命は美しい桜の季節に始まるだろう そう信じた
そして晩秋
行なわれるはずの約束はなにひとつ果されなかった

沼のほとりを迂回してボーボーとウシガエルの鳴き声を聞きながら
君の墓に出向く

さきにそちら側に行ったとて 友よ わたしを呼ばないでくれ
死はこちら側にあることで君をしのび、そちら側には死さえないのだから
僕たちの青春が棒を振る徒労であったとは言うまい
薄の生い茂る荒れ野で
蚊柱を打つ木刀だったとしても
僕たちは誇りをもって生き抜き
振り上げた棒で 棒をふるように逝くだけなのだから

きみの墓石に木刀を立て掛け
そして僕は問うだろう
なぜこんなに君にあいたいのかと


戻る   Point(3)