夜想曲 (四行連詩)/乱太郎
 
夜の静寂に歌のような言葉
耳たぶに引っ掛かって時を揺らす
此処にはいないはずの
あなたが聴こえてくるのです


  朝の雑踏に歌のような言葉
  靴紐を解いて時を忘れさせる
  此処にはもういない
  きみをもっと聴きたかった


昼の日溜まりに歌のような言葉
猫の欠伸がひと時を眠らせる
此処にはいたはず
あなたをかつて聴いていました


  夜の静寂に歌のような言葉
  書き損じの散文のようなぼくにはもう
  届かない陽光の許での約束が
  果たされる術を喪って(夜の静寂にかつて…)


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