いい加減にしろ。/岩下こずえ
 
でも思っているのでしょう。」
 ・・・そうだろう。

 吐き捨てられ、路上に貼り付いた、まっくろなガム。
 安売りのシールを貼られ、店先にさらされている、まっくろな女性下着。
 弱っているのか、嘔吐物を吐き出している、まっくろなカラス。
 こちらをじっと見てくる警官の、あの腰にさげられている、あの拳銃のグリップのまっくろなこと。

「そんなことは、どうでもいい。やめろ。本当に、どうでもいい。もう、うんざりなんだ。」
 お前は本気で生きている。どうやってるのか、聞かせてくれないか?
「そうすると、きっと誰かが戻ってきて、やさしく、こう言い聞かせてくれるんです。」
 ・・・そんなやつはいやしない。いい加減にしろ。
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