いい加減にしろ。/岩下こずえ
でも思っているのでしょう。」
・・・そうだろう。
吐き捨てられ、路上に貼り付いた、まっくろなガム。
安売りのシールを貼られ、店先にさらされている、まっくろな女性下着。
弱っているのか、嘔吐物を吐き出している、まっくろなカラス。
こちらをじっと見てくる警官の、あの腰にさげられている、あの拳銃のグリップのまっくろなこと。
「そんなことは、どうでもいい。やめろ。本当に、どうでもいい。もう、うんざりなんだ。」
お前は本気で生きている。どうやってるのか、聞かせてくれないか?
「そうすると、きっと誰かが戻ってきて、やさしく、こう言い聞かせてくれるんです。」
・・・そんなやつはいやしない。いい加減にしろ。
戻る 編 削 Point(1)