無重力ラボラトリー/カワグチタケシ
 
セダム 沙漠に咲く小さな花
極度の乾燥にも耐えうる種は
都市の上空に

正確で厳密な彼女の仕事は
成層圏を行きかう祈りと重なり
いつか惑星へと届くだろう

無重力のラボラトリーで
小さなプランターを規則正しく並べ
左手に持った鉛筆で一定時間毎に
蒸散のデータを記録しながら
彼女の紅茶は徐々に冷めていく

そのころ地上で彼は
漠然とした選択に迷い
小さな失敗を重ねながら
朝な夕な
地下鉄を乗り継いでいる

イヤホンから流れる感傷的な旋律
その隙間に割って入る構内アナウンス
架線故障の影響で引き込み線に
遅れが生じています

そして太陽が惑星の影に隠れ
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