夜更けの紙相撲・チルチル サクラ/そらの珊瑚
 
 今年の桜は早かったようで、娘の高校入学式にはすでに満開を過ぎて、けれどもかろうじて花は残っていた。この季節、日本は桜の国になる。わたしたちは桜の国の住人になる。お祝いごとがそんな時期と重なるのは、素敵な風景だなあと毎年思う。

 散ったばかりの桜道は、まるで新雪が積もったように美しい。雪ならば溶けて水になるのだろうが、桜の花びらはどこへゆくのだろう。ひとつとして残らずに。
 どこかへゆくのだろうけれど、ちりぢりになったそのゆくえを、私には追うことは出来ない。
 たとえばそんな風にして、さよならさえ言わずに消えてしまうということは、花びらだけではなさそうだ。シャッターも押さなければ記憶の
[次のページ]
[グループ]
戻る   Point(11)