夜更けの紙相撲・チルチル サクラ/そらの珊瑚
今年の桜は早かったようで、娘の高校入学式にはすでに満開を過ぎて、けれどもかろうじて花は残っていた。この季節、日本は桜の国になる。わたしたちは桜の国の住人になる。お祝いごとがそんな時期と重なるのは、素敵な風景だなあと毎年思う。
散ったばかりの桜道は、まるで新雪が積もったように美しい。雪ならば溶けて水になるのだろうが、桜の花びらはどこへゆくのだろう。ひとつとして残らずに。
どこかへゆくのだろうけれど、ちりぢりになったそのゆくえを、私には追うことは出来ない。
たとえばそんな風にして、さよならさえ言わずに消えてしまうということは、花びらだけではなさそうだ。シャッターも押さなければ記憶の
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