夜と虚像/木立 悟
やそ ここのそ
ふたほ みほ
灯が消えるたび現われる
花を数える花の声
晴れた夜に飛び交う羽
影は枝 影は茎
すりぬけてはひとり
水たまりの径
食べてはいけないと
思いながら食べてしまった
うなじの花
手のひらの花
誰のものでもないと
わかっていながら奪ってしまった
鎖骨にとどまる音
金緑の音
ふたちとおあまりいつつ
いそあまりふたつ
埋まらないはざまの夜を
駆けてゆくけだもの
花が花を抄い
口に含み
鏡にこぼれ
虚は双つに満ちてゆく
さわれぬ姿に
満ちてゆく
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